tなりき。ふくらなる身《み》を跳《おど》らせて、
銀色《ぎんしよく》の衾《ふすま》の裾《すそ》にのぼりつつ背《せ》を高《たか》めたる。
黄《き》ばみたる青葱色《あをねぎいろ》の眼《め》の光《ひかり》来《きた》る夜《よ》の恐怖《おそれ》にそそぐ。
かくてただ声《こゑ》もなし。青《あを》く光《ひか》る硝子戸《がらすど》に真白《ましろ》なる顔《かほ》ふりむけて、
哀楽《あいらく》の表情《へうじやう》もなく親《した》しげに畜類《ちくるゐ》の眼《め》と並《なら》びつつ何《なに》をか凝視《みつ》む。
ああ、暗《くら》き暗《くら》き葱畑《ねぎばたけ》の地平《ちへい》に黄《き》なる月《つき》いでんとして、
※[#「金+肅」、第3水準1−93−39]銀《しやうぎん》の鐘《かね》は鳴《な》る……幽《かす》かに、……幽《かす》かに……やるせなき霊《たましひ》の求《と》めもあへぬ郷愁《ノスタルヂヤア》。
[#地から3字上げ]四十三年二月
雪ふる夜のこころもち
今夜《こんや》も雪が降つてゐる。……
Blue devils よ。
酔ひ狂つた俺《おれ》の神経が――
Sara …… sara ……とふる雪
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