sそと》をうち凝視《みつ》む。
そが背後《うしろ》の棚《たな》の上《うへ》、やや青《あを》みたる陰影《いんえい》の中《うち》、
ニツケルの産科《さんくわ》の器械《きかい》鵞《が》のごとき嘴《はし》して光《ひか》り、
薄《うす》く曇《くも》れる硝子《がらす》のなかにとりあつめたる薬剤《やくざい》の罎《びん》、
その青《あを》く赤《あか》くおぼめける劇薬《げきやく》のエチケツテ……鋭《するど》く、苦《にが》し。
ああ骨《ほね》なし児《ご》よ。この薄暮《くれがた》の反射《はんしや》に、
柔軟《やはら》かにして悩《なや》ましき汝《な》が衾《ふすま》は銀《ぎん》の潤沢《しめり》に光《ひか》れど、
冷《ひや》やかなる鉄《てつ》の寝台《ねだい》の上《うへ》、据《す》ゑられし木造《きづくり》の函《はこ》は、
汝《な》が身《み》を入《い》れたる小《ちひ》さき牢獄《ひとや》は山葵色《わさびいろ》の曇《くもり》にうち歎《なげ》く。
大人《おとな》びたる顔《かほ》の白《しろ》き白《しろ》き白粉《おしろい》の恐《おそ》ろしさよ。
なよなよと凭《もた》せたる身体《からだ》のしまりなさ。
霊《たましひ》の青《
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