ツき》」のごとく
隈《くま》青き眼《め》の光|烟《けぶり》とともにスツポンの深き恐怖《おそれ》よりせりあがる。……
何時《いつ》も何時《いつ》もわが悲哀《かなしみ》の背景《バツク》には銀色《ぎんいろ》の密境《みつきやう》ぞ住む。
そのなかに鳴きしきる虫の音よ、
匂《にほひ》高き空気《くうき》の迅《はや》き顫動《せんどう》、
太棹《ふとざを》と、鋭《するど》き拍子木《ひやうしぎ》、
ああああわが凡《すべて》の官能《くわんのう》は盲《めし》ひんとして静かに光る。
※[#ローマ数字5、1−13−25] 神経の凝視
日は暮るる、日は暮るる、力《ちから》なき欝金《うこん》の光……
ゆき馴《な》れし一本《ひともと》の楡《にれ》のもと、半《なかば》壊《こは》れし長椅子《ベンチ》に、
恐ろしき病室《びやうしつ》を抜《ぬ》けいでたるわがこころの
神経《しんけい》の疑《うたがひ》ふかき凝視《ぎようし》……
足もとの、そこここの小さき花は
長く長く抱擁《はうえう》したるあとの黄色《きいろ》なる興奮《こうふん》に似て
光り……なげき……吐息《といき》し……
沈黙《ちんもく》したる風は
生前《せ
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