sひとよ》、
わが寝《ね》たる心のとなりに泣くもののうれひよ。

   ※[#ローマ数字4、1−13−24] 銀色の背景

わが悲哀《かなしみ》の背景《バツク》は銀色《ぎんいろ》なり。
そは五月《ごぐわつ》の葱畑《ねぎばたけ》のごとく、
夏の夜の「若竹《わかたけ》」の銀襖《ぎんぶすま》のごとく青白き瓦斯《がす》に光る。

そのまへに、――
弊私的里《ヒステリイ》の甚しきは
私通《しつう》したる※[#「さんずい+自」、第3水準1−86−66]芙藍色《さふらんいろ》の[#「※[#「さんずい+自」、第3水準1−86−66]芙藍色《さふらんいろ》の」は底本では「泊芙藍色《さふらんいろ》の」]女の
声もなき白痴《はくち》の児をば抱きながら入日を見るがごとくに歩《あゆ》み、
かの苦《にが》く青くかなしき愁夜曲《ノクチユルノ》……
ある夜《よ》のわれは恐ろしくして美しき竹本小土佐の
「合邦《がつぽう》」の玉手御前《たまてごぜん》の悲歎《なげき》をば弾語《ひきがたり》する風情《ふぜい》に坐《すわ》り、
暗き暗き欝悶《うつもん》は
鈍銀《にぶぎん》の引《ひ》かれゆく幕の前に、指組《ゆびく》める「仁木《に
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