tもないひと躍り、……

  Kappore! Kappore!
  Amacha de Kappore!
  Shiwocha de Kappore!
  Yoito na! Yoi! Yoi!

緋のだんだらの尖帽《せんばう》に戯姿《おどけすがた》の道化師《だうけし》が
恐ろしきほど真白《まつしろ》く白粉《おしろい》つけた呆《とぼ》けがほ。

  Oki …… no …… o …… o,
  Kura …… ai …… no …… ni …… i, i,
  Shira …… a …… Ho …… ga …… miyuru,
  Are … wa … Ki …… no … Ku … u, u … ni,
  Ha! Yoito kono korewa no sa!
  A! a! a! a! a!
  Mika …… n …… Bu …… u, u …… ne ……!

目も動かさず、白々《しらじら》と悪《わる》く澄《す》ましたくはせ者、
燥《はしや》ぎくるめく廉《やす》ものの
蓄音機から絞《しぼ》りだす囃《はやし》――黄色《きいろ》な甲高《かんだか》の
三味《しやみ》の笑《わらひ》に挑《いど》まれて、
戯《おど》けつくした身のひねり、
突拍子《とつぺし》もないひと躍り……

  Ichi kake, Ni kake, San kake te,
  Shi kake te, Go kake te, Hasyo kake te,
  Kawai Okata wo ……

ふいと消えたる変化《へんげ》もの、
白粉《おしろい》の濃《こ》い、手の白い、素足《すあし》の白い、
唇《くちびる》の赤《あか》い沈黙《ちんもく》……

雨はふる……雨はふる……
陰気な黴くさい雨……長い雨……日ぐらしの雨……
気まぐれな不摂生《ふせつせい》のあとの痛《いた》ましい寂寥《さびしみ》、
幻影《イリユージヨン》の消え失せた雰囲気《ふんゐき》の暗《くら》い緑に、
むづ痒《か》ゆいやうな、気の抜けた、さみしい、弱い、せうことなしの
雨はふる……雨はふる……本能と神経の黄昏時《たそがれどき》。

しとしと[#「しとしと」に傍点]と、しとしと[#「しとしと」に傍点]と、
絶え間なく雨はふる、ふりそそぐ、葉から葉へ、しと[#「しと」に傍点]と滴《したた》る。
深緑《しんりよく》の闇《くら》い夜《よ
前へ 次へ
全48ページ中23ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
北原 白秋 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング