なに》かうしろに來る音に
はつと恐れてわななきぬ。
『そのあかんぼを食べたし。』と
黒い女猫《めねこ》がそつと寄る。


 ロンドン


夏の日向《ひなた》にしをれゆく
ロンドン草《さう》の花見れば
暑き砂地にはねかへる
蟲のさけびの厭はしや。

かつはさみしき唇《くちびる》に
カステラの粉をあつるとき、
ひとりとくとく乳《ちち》ねぶる
あかんぼの頭《あたま》にくらしや。

夏の日向にしをれゆく
ロンドン草よ、わがうれひ。
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松葉牡丹のことをわが地方にてロンドンと呼びならはしぬ。その韻いまもわすれず。
[#ここで字下げ終わり]


 接吻


臭《にほひ》のふかき女きて
身體《からだ》も熱《あつ》くすりよりぬ。
そのときそばの車百合
赤く逆上《のぼ》せて、きらきらと
蜻蛉《とんぼ》動かず、風吹かず。
後退《あとし》ざりしつつ恐るれば
汗ばみし手はまた強く
つと抱きあげて接吻《くちづ》けぬ。
くるしさ、つらさ、なつかしさ、
草は萎れて、きりぎりす
暑き夕日にはねかへる。


 汽車のにほひ


汽車が來た、――釣鐘草《つりがねさう》のそばに、
何時《いつ》も羽蟻《は
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