もろて》あはせぬ。
長老は拂子《ほつす》しづしづ
誦經《ずきやう》いま、咽び音《ね》まじり、
廣澄《ひろす》みぬ。――七歳《ななつ》の我は
興なさに、此時膝に
眼うつせば、紗《しや》の服がくれ、
だぶだぶの赤足袋。――をかし、
髯づらに涙ながれき。
『南無阿彌陀。』―― 沙彌《しやみ》が眼光り、
拂子《ほつす》ゆれ、風湧く刹那、
一齊に念佛起り、
老若も、男女も、子らも、
赤足袋も、咽《むせ》ぶと見れば、
層高《きはだか》の銅拍子《どうびやうし》、――あなや、
われ堪へず、――笑ひくづれき。
挨拶
祭《まつり》の日、美くしき人も來ましき。
稚き女の友もあつまりぬ。
あるは、また、馬に騎《の》りて、
物むつかしき武士《さむらひ》の爺《をぢ》も來ましき。
樂しかる祭なれども、
われはただつねにおそれぬ。
祭《まつり》の日、むつかしき言《こと》のかずかず
挨拶《あひしら》ひ、父は笑《ゑ》ましき、
禿頭《はげあたま》するするとかきあげながら――
われもまた爲《せ》ではかなはじ、かのごとも大人《おとな》とならば。
樂しかる祭《まつり》なれども、
われはただつねにおそれぬ。
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