ゆるかにわたり、
畑にはからし花咲き、
雲雀また妙《たへ》にうかびぬ。

南向く白き酒倉、
そがもとにわれはその日も、
幟《のぼり》立つ野の末ながめ
ゆめのごとむきし佛手柑《ぶしゆかん》。

かすかにも囃子《はやし》はきこえ、
笛まじり風もにほへど、
父のまたゆるしたまはぬ
歌舞伎見《かぶきみ》をなにとかすべき。

かくてまたすすり泣きつつ、
實をひとり吸ひもてゆけば
酸《す》ゆかりき。あはれ、それより
われ世をば厭ひそめにき。


 青き甕


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青き甕にはよくコレラ患者の死骸を入れたり、これらを幾個となく擔ぎゆきし日のいかに恐ろしかりしよ、七歳の夏なりけむ。
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『青甕《あをがめ》ぞ。』――街衢《ちまた》に聲す。
大道に人かげ絶えて
早や七日、溝に血も饐《す》え、
惡蟲の羽風の熱さ。
日も眞夏、火の天《そら》爛《ただ》れ、

雲|燥《い》りぬ。――大家《たいけ》の店に、
人々は墓なる恐怖《おそれ》。
香《かう》くすべ、青う寢そべり、
煙管《きせる》とる肱もたゆげに、
蛇のごと眼のみ光りぬ。

『青甕《あをがめ》ぞ。』――今こそ家族《やから
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