源平將棊
春の夜の源平將棊、
あはれなほ思ひぞ出づる。
ただ一夜《ひとよ》あてにをさなく
ほのかにも見てしばかりに。
その君はわれとおなじく
かぶろ髪、ゆめの眸《まみ》して
紅《くれなゐ》の玉をとらしき。
われは白、かくて對《むか》ひぬ。
春の夜の源平將棊、
そののちは露だにあはず、
名も知らず、われも長じて
二十歳《はたとせ》の春にあへれど。
などかまた忘れはつべき。
紅のとらす玉ゆゑ、
いとけなく勝たせまつりし
そのかみの春の夜のゆめ。
朝
日は皐月《さつき》、
小野のしら花、
鈴状《すゞなり》に咲きて夜あけぬ。
靜《しずか》なり、ひとり坐れば。
靜なり、ひとり坐れば。――
くるる戸の
きしるにほひも。
君は早や、
麥の青みを――
鈴鳴らし朝の祷《いの》りに、――
白《しら》ぎぬに摺りもこそゆけ、
白ぎぬに摺りもこそゆけ、
野の寺へ。――
かくも思ひぬ。
ああしばし、
星のうすれに、
髪なぶる風のなよびも、
水鳥のほののしらべも、
水鳥のほののしらべも、
われききぬ。
きみがこころも。
人生
野の皐月《さつき》、空ものどかに、
白き雲
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