定紋《じやうもん》つけた古い提灯が、ぼんやりと、
その舟の芝居もどりの家族《かぞく》を眠らす。
ほうつほうつと螢が飛ぶ…………
あるかない月の夜に鳴く蟲のこゑ、
向ひあつた白壁の薄あかりに、
何かしら燐のやうなおそれがむせぶ。
ほうつほうつと螢が飛ぶ…………
草のにほひする低い土橋《どばし》を、
いくつか棹をかがめて通りすぎ、
ひそひそと話してる町の方へ。
ほうつほうつと螢が飛ぶ…………
とある家のひたひたと光る汲水場《クミツ》に
ほんのり立つた女の素肌
何を見てゐるのか、ふけた夜のこころに。
酒の黴
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酒屋男は罰|被《か》ぶらんが不思議、ヨイヨイ、足で米といで手で流す、ホンニサイバ手で流す。ヨイヨオイ。
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1
金《きん》の酒をつくるは
かなしき父のおもひで、
するどき歌をつくるは
その兒の赤き哀歡《あいくわん》。
金《きん》の酒つくるも、
するどき歌をつくるも、
よしや、また、わかき娘の
父《てて》知らぬ子供生むとも…………
2
からしの花の實になる
春のすゑのさみしや。
酒をしぼる男の
肌さへもひとし
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