かいひろげたり。[#この註、2行目以降は3字下げ]
敵
いづこにか敵のゐて、
敵のゐてかくるるごとし。
酒倉のかげをゆく日も、
街《まち》の問屋に
銀紙《ぎんがみ》買ひに行くときも、
うつし繪を手の甲に押し、
手の甲に押し、
夕日の水路《すゐろ》見るときも、
ただひとりさまよふ街の
いづこにか敵のゐて
つけねらふ、つけねらふ、靜こころなく。
たそがれどき
たそがれどきはけうとやな、
傀儡師《くぐつまはし》の手に踊る
華魁《おいらん》の首|生《なま》じろく、
かつくかつくと目が動く…………
たそがれどきはけうとやな、
瀉に墮《おと》した黒猫の
足音もなく歸るころ、
人靈《ひとだま》もゆく、家《や》の上を。
たそがれどきはけうとやな、
馬に載せたる鮪《しび》の腹
薄く光つて滅《き》え去れば、
店の時計がチンと鳴る。
たそがれどきはけうとやな、
日さへ暮るれば、そつと來て
生膽取《いきぎもとり》の青き眼が
泣く兒|欲《ほ》しやと戸を覗《のぞ》く…………
たそがれどきはけうとしやな。
赤き椿
わが眼《め》に赤き藪椿。
外《そと》の空氣にあかあかと、
音なく
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