或《あるひ》は仄《ほの》の水鳥《みづとり》のそことしもなき音《ね》のうれひ、
河岸《かし》の氷室《ひむろ》の壁も、はた、ただに真昼の
白蝋《はくらふ》の冷《ひや》みの沈黙《しじま》。

かくてただ悩《なや》む吊橋《つりはし》、
なべてみな真白き水《み》の面《も》、はた、光、
ただにたゆたふ眩暈《くるめき》の、恐怖《おそれ》の、仄《ほの》の哀愁《かなしみ》の
銀《ぎん》の真昼《まひる》に、色重き鉄《てつ》のにほひぞ
鬱憂《うついう》に吊られ圧《お》さるる。

鋼鉄《かうてつ》のにほひに噎《むせ》び、
絶えずまた直裸《ひたはだか》なる男の子
真白《ましろ》に光り、ひとならび、力《ちから》あふるる面《おもて》して
柵《さく》の上より躍《をど》り入る、水の飛沫《しぶき》や、
白金《はつきん》に濡《ぬ》れてかがやく。

真白《ましろ》なる真夏《まなつ》の真昼《まひる》。
汗《あせ》滴《した》るしとどの熱《ねつ》に薄曇《うすくも》り、
暈《くら》みて歎《なげ》く吊橋のにほひ目当《めあて》にたぎち来る
小蒸汽船《こじようきせん》の灰《はひ》ばめる鈍《にぶ》き唸《うなり》や、
日は光り、煙うづまく
前へ 次へ
全122ページ中71ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
北原 白秋 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング