《せり》の花、
あなや、しとどにおしなべて日ぞ照りそそぐ。
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声もなき鵞鳥《がてう》のうから
色みだし水に消え入る
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午後六時、鵞鳥《がてう》の見たる水底《みなぞこ》は
血潮したたる沼《ぬま》の面《も》の負傷《てきず》の光
かき濁る泥《どろ》の臭《くさ》みに疲《つか》れつつ、
水死《すゐし》の人の骨のごとちらぼふなかに
もの鈍《にぶ》き鉛の魚のめくるめき、
はた浮《うか》びくる妄念《まうねん》の赤きわななき。
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逃《に》げいづる鵞鳥《がてう》のうから
鳴きさやぎ汀《みぎは》を走《はし》る。
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午後六時、あな水底《みそこ》より浮びくる
赤きわななき――妄念の猛《たけ》ると見れば、
強き煙草に、鉄《てつ》の香《か》に、わかき男に、
顔いだす硝子《がらす》の窓の少女《をとめ》らに血潮したたり、
歓楽《くわんらく》の極《はて》の恐怖《おそれ》の日のおびえ、
顫《ふる》ひ高まる苦痛《くるしみ》ぞ朱《あけ》にくづるる。
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刹那、ふと太《ふと》く湯気《ゆげ》吐き
吼《ほ》えいづ
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