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明治四十二年一月
[#地から2字上げ]著者識
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魔睡
余は内部の世界を熟視めて居る。陰鬱な死の節奏は絶えず快く響き渡る……と神経は一斉に不思議の舞踏をはじめる。すすりなく黒き薔薇、歌うたふ硝子のインキ壺、誘惑の色あざやかな猫眼石の腕環、笑ひつづける空眼の老女等はこまかくしなやかな舞踏をいつまでもつづける。余は一心に熟視めて居る……いつか余は朱の房のついた長い剣となつて渠等の内に舞踏つてゐる………[#地から1字上げ]長田秀雄
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邪宗門秘曲
われは思ふ、末世《まつせ》の邪宗《じやしゆう》、切支丹《きりしたん》でうすの魔法《まはふ》。
黒船《くろふね》の加比丹《かひたん》を、紅毛《こうまう》の不可思議国《ふかしぎこく》を、
色《いろ》赤《あか》きびいどろを、匂《にほひ》鋭《と》きあんじやべいいる、
南蛮《なんばん》の桟留縞《さんとめじま》を、はた、阿刺吉《あらき》、珍※[#「酉+它」、第4水準2−90−34]《ちんた》の酒を。
目見《まみ》青きドミニカびとは陀羅尼《だらに》誦《ず》し夢にも語る、
禁制《きんせい》の宗門
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