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蝋《らふ》の火と懺悔《ざんげ》のくゆり
ほのぼのと、廊《らう》いづる白き衣《ころも》は
夕暮《ゆふぐれ》に言《もの》もなき修道女《しうだうめ》の長き一列《ひとつら》。
さあれ、いま、※[#濁点付き片仮名ヰ、1−7−83]オロンの、くるしみの、
刺《さ》すがごと火の酒の、その絃《いと》のいたみ泣く。

またあれば落日《いりひ》の色《いろ》に、
夢|燃《も》ゆる、噴水《ふきあげ》の吐息《といき》のなかに、
さらになほ歌もなき白鳥《しらとり》の愁《うれひ》のもとに、
いと強き硝薬《せうやく》の、黒き火の、
地の底の導火《みちび》燬《や》き、※[#濁点付き片仮名ヰ、1−7−83]オロンぞ狂ひ泣く。

跳《をど》り来《く》る車輌《しやりやう》の響《ひびき》、
毒《どく》の弾丸《たま》、血《ち》の烟《けむり》、閃《ひら》めく刃《やいば》、
あはれ、驚破《すは》、火とならむ、噴水《ふきあげ》も、精舎《しやうじや》も、空も。
紅《くれなゐ》の、戦慄《わななき》の、その極《はて》の
瞬間《たまゆら》の叫喚《さけび》燬《や》き、※[#濁点付き片仮名ヰ、1−7−83]オロンぞ盲《めし》ひたる。

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