ういった。
「わたしの糸で、わたしの針で、
わたしがつくろ、経帷子をつくろ」
「だァれがしるす、戒名《かいみょう》をしるす」
「そォれはわたしよ」ひばりがそういった。
「あかるいならば、くれないならば、
わたしがしるそ、戒名をしるそ」
「だァれがたつか、お葬式《ともらい》にたつか」
「そォれはわたしよ」おはとがそういった。
「葬《ともら》ってやろよ、かわいそなものを、
わたしがたとうよ、お葬式にたとうよ」
「だァれがほるか、お墓の穴を」
「そォれはわたしよ」ふくろがそういった。
「わたしの鏝《こて》で、ちいさな鏝で、
わたしがほろよ、お墓の穴を」
「だァれがなるぞ、お坊《ぼう》さんになるぞ」
「そォれはわたしよ」白嘴《しらはし》がらすがそういった。
「経本《きょうほん》もって、小本《こほん》をもって、
わたしがなろぞ、お坊さんになろぞ」
「だァれがならす、お鐘をならす」
「そォれはわたしよ」おうしがこういった。
「わたしはひける、力がござる、
わたしがならそ、お鐘をならそ」
空《そォら》の上からみんなの小鳥が、
ためいきついたりすすりなきしたり、
みんなみんなきいた、なりだ
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