計をかけあがる。
柱時計がチーンとうつ。
ねずみがすたこらかけおりる。
いっちく、たっちく、おうやおや。
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卵
お乳のよに白い大理石の壁に、
絹《きぬ》の柔軟《しな》したうすい膜《かわ》つけて、
すいて凝《こご》った泉の中に
金のりんごがみえまする。
そのお城に戸一つないので、
どろぼうどもまでわりこんで金のりんごをぬすみだす。
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朝焼け夕焼け
朝焼け小焼け、
ひつじかいの気がかり。
夕焼け小焼け、
ひつじかいの後生楽《ごしょうらく》。
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風がふきゃ
風がふきゃ、
まわります、
粉ひき車よ。
風がやみゃ、
とまります、
粉ひき車さ。
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文なし
一文なしの文三郎《もんさぶろう》、文三郎をさらおうと
どろぼうどもがやってきた。
にげた、にげた、烟突《えんとつ》の素頂辺《すてっぺん》へ攀《よ》じてった。
しめた、しめたとどろぼうどもがおっかけた。
それをみて文三郎、そろっとむこうへにげおりた。
こうなりゃみつかるまい。
かけた、かけた、十五日《じゅうごんち》に十四《じゅうし》マイル、
それで、ふりむいたが、もうだァれもみえなんだ。
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ファウスト国手《せんせい》
ファウスト国手《せんせい》はいい人で、
時々、お弟子たちをひっぱたく。
ひっぱたいて、おどらして、追ったてて、
イギリスでてからフランスへ、
フランスでてからスペインへ、
そしてまた、ひっぱたいて逆もどり。
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とことこ床屋さん
とこ、とこ、床屋さん、
ぶたの毛かっちょくれ、
鬘《かずら》がちょっくらいりようだが、
何本、その毛がありゃたりる。
二十四《にじゅうし》本でたくさんだ。
フンとお鼻でごあいさつ。
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おくつの中に
おくつの中におばあさんがござる、
子供がどっさり、しまつがつかない、
おかゆばっかり、パンもなにもやらず、
おまけに、こっぴどくひっぱたき、
ねろちゅば、ねろちゅば、このちびら。
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一つの石に
一つの石に小鳥が二羽よ。
ファ、ラ、ラ、ラ、ラルド。
一羽がとんでった、一羽がのこった。
ファ、ラ、ラ、ラ、ラルド。
また一羽とんでった、だァれもなくなった。
ファ、ラ、ラ、ラ、ラルド。
石だけぽっつりのォこった。たったひとりのォこった。
ファ、ラ、ラ、ラ、ラルド。
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コオル老王
お年寄りのコオル王は愉快なお爺《じっさ》、
愉快なお爺《じっさ》、
すぐにパイプめして、お酒杯《さかずき》めしてね、
そして胡弓《こきゅう》ひきを三人ほどおめしで。
どれの胡弓ひきもよい胡弓もちでよ、
中で一番なは王さまの胡弓よ、
ツウイ・ツウイズル・デイ、ツウイズル・デイ。……
それそれ胡弓ひきがひきだしたよ、おききな。
だれにくらびょうか、めったにまたなかろ、
コオル王さまとその胡弓ひきよね。
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雨、雨、いっちまえ
雨、雨、いっちまえ、
またいつかきなよ、
はよでてあァそぼに。
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花壇にぶた
お庭の花壇にぶたがでた。
それいってとっつかめ。
小麦の畑《はたけ》にうしがきた。
はしれ、はしれ、男の子。
クリイムのおなべにねこがいる。
はしれ、はしれ、女の子。
山火事だ。
はしれ、はしれ、男の子。
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日の照り雨
日の照り雨《あァめ》、
小半時《こはんとき》ももてぬ。
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いばらのかげに
いばらのかげに、
ひもじさ、さむさ。
花さくかげに、
白金《しろがね》、黄金《こがね》。
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セント・クレメンツの鐘
のぼれいそいそ、またおりなされ、
鐘はロンドン、つけば数ござる。
「オレンジにレモン」
セント・クレメンツの鐘がなる。
「標的《まと》と、標的《まと》の星」
セント・マアガレッツの鐘がなる。
「煉瓦《れんが》に瓦《かわら》」
セント・ギルスの鐘がなる。
「半《ハアフ》ペンスに*ファシング」
セント・マアルチンスの鐘がなる。
「パン菓子におせんべい」
セント・ピイタアスの鐘がなる。
「二本の枝、一つのりんご」
ホワイト・チャペルの鐘がなる。
「灰かき、火ばし」
セント・ジョンスの鐘がなる。
「湯わかし、おなべ」
セント・アンヌスの鐘がなる。
「バルドペエトじいさんよう」
オルトゲエドののろい鐘。
「おまえに十シルリング貸しがある」
セント・へレンズの鐘がなる。
「いィつはろうてくれるんじゃ」
ふるいベエレエの鐘がなる。
「おいらが金持ちになったらな」
ショルジッチの鐘がなる。
「そしたらたのむよ、そのときは」
ステプニイの鐘がなる。
「おれんしったこつかい」と
ボウの
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