六〕 娘子某
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 むかし娘がいたが、父母に知らせず窃《ひそ》かに一人の青年に接した。青年は父母の呵嘖《かしゃく》を恐れて、稍《やや》猶予のいろが見えた時に、娘が此歌を作って青年に与えたという伝説がある。「小泊瀬山」の「を」は接頭詞、泊瀬山、今の初瀬《はせ》町あたり一帯の山である。「石城《いはき》」は石で築いた廓《かく》で此処は墓のことである。この歌も普通の歌で、男がぐずぐずしているのに、女が強くなる心理をあらわしたものである。前の歌は実徳の上からいえば、貞になり、これもまた貞の一種になるかも知れない。親をも措《お》いて男に従うという強い心に感動せられて伝説が成立すること、他の歌の例を見ても明かである。「な思ひ、我が背」の口調は強いが、女らしい甘い味いがある。毛詩に、「死則同[#(セム)][#レ]穴」とあるのは人間共通の合致《がっち》であるだろう。

           ○

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安積山《あさかやま》影さへ見ゆる山の井の浅き心を吾が思《も》はなくに 〔巻十六・三八〇七〕 前の采女某
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 葛城王《かずらきのおおきみ》が陸
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