敷《たかしき》のうへかた山《やま》は紅《くれなゐ》の八入《やしほ》の色《いろ》になりにけるかも 〔巻十五・三七〇三〕 新羅使(大蔵麿)
[#ここで字下げ終わり]
 一行が竹敷《たかしき》浦(今の竹敷港)に碇泊した時の歌が十八首あるその一つで、小判官|大蔵忌寸麿《おおおくらのいみきまろ》の作である。「うへかた山」は上方《うえかた》山で今の城山であろう。「八入の色」は幾度も染めた真赤な色というのである。単純だが、「くれなゐの八入《やしほ》の色」で統一せしめたから、印象鮮明になって佳作となった。「くれなゐの八入《やしほ》の衣朝な朝な穢《な》るとはすれどいや珍しも」(巻十一・二六二三)がある。この時の十八首の中には、大使|阿倍継麿《あべのつぎまろ》が、「あしひきの山下《やました》ひかる黄葉《もみぢば》の散りの乱《まがひ》は今日にもあるかも」(巻十五・三七〇〇)、副使大伴|三中《みなか》が、「竹敷《たかしき》の黄葉を見れば吾妹子《わぎもこ》が待たむといひし時ぞ来にける」(同・三七〇一)、大判官|壬生宇太麻呂《みぶのうだまろ》が、「竹敷の浦廻《うらみ》の黄葉《もみぢ》われ行きて帰り来るまで散りこす
前へ 次へ
全531ページ中463ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
斎藤 茂吉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング