・二五三九)の「否をかも」と同じである。古樸《こぼく》な民謡風のもので、二つの聯想《れんそう》も寧《むし》ろ原始的である。それに、「降れる」というところを「降らる」と訛《なま》り、「乾せる」というところを「乾さる」と訛り、「かも」という助詞を三つも繰返して調子を取り、流動性進行性の声調を形成しているので、一種の快感を以て労働と共にうたうことも出来る性質のものである。「かなしき」は、心の切《せつ》に動く場合に用い、此処では可哀《かあ》いくて為方《しかた》のないという程に用いている。「児ろ」の「ろ」は親しんでつけた接尾辞で、複数をあらわしてはいない。この歌はなかなか愛すべきもので、東歌の中でもすぐれて居る。
 ニヌは原文「爾努」で旧訓ニノ。仙覚抄でニヌと訓《よ》み、考《こう》でニヌと訓んだ。布《ぬの》の事だが、古鈔本中、「爾《ニ》」が「企《キ》」になっているもの(類聚古集《るいじゅうこしゅう》)があるから、そうすれば、キヌと訓むことになる。即ち衣《きぬ》となるのである。

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信濃《しなぬ》なる須賀《すが》の荒野《あらの》にほととぎす鳴《な》
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