しきにおくれゐて君に恋ひつつ顕《うつ》しけめやも」(巻十五・三七五二)という、狭野茅上娘子《さぬのちがみのおとめ》の歌は全くこの歌の模倣である。おもうに当時の歌人等は、家持《やかもち》などを中心として、古歌を読み、時にはかく露骨に模倣したことが分かり、模倣心理の昔も今もかわらぬことを示している。「丹波道《たにはぢ》の大江《おほえ》の山の真玉葛《またまづら》絶えむの心我が思はなくに」(巻十二・三〇七一)というのも序詞の一形式として書いておく。
 以上で巻十二の選は終ったが、従属的にして味ってもいいものが若干首あるから序《ついで》に書記《かきしる》しておこう。たいして優れた歌ではない。
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死なむ命|此《ここ》は念《おも》はずただにしも妹に逢はざる事をしぞ念《おも》ふ (巻十二・二九二〇)
各自《おのがじし》ひと死《しに》すらし妹に恋ひ日《ひ》に日《け》に痩《や》せぬ人に知らえず (同・二九二八)
うまさはふ目には飽けども携《たづさ》はり問はれぬことも苦しかりけり (同・二九三四)
思ふにし余りにしかば術《すべ》を無み吾はいひてき忌《い》むべきものを (同二九四七)

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