まぶき》のにほへる妹《いも》が唐棣花色《はねずいろ》の赤裳《あかも》のすがた夢《いめ》に見えつつ 〔巻十一・二七八六〕 作者不詳
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 この歌は、一首の中に山吹と唐棣《はねず》即ち庭梅《にわうめ》とを入れてそれの色彩を以て組立てている歌だが、少しく単純化が足りないようである。それにも拘《かか》わらず此歌を選んだのは、夢に見た恋人が、唐棣《はねず》色の赤裳を着けていたという、そういう色までも詠み込んでいるのが珍しいからである。万葉集の歌は夢をうたうにしても、かく具体的で写象が鮮明であるのを注意すべきである。

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こもりづの沢《さは》たづみなる石根《いはね》ゆも通《とほ》しておもふ君《きみ》に逢《あ》はまくは 〔巻十一・二七九四〕 作者不詳
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 この歌も、谿間《たにま》の水の具合をよく観ていて、それを序詞としたのに感心すべく、隠れた水、沢にこもり湧く水が、石根をも通し流れるごとくに、一徹におもっております、あなたに逢うまでは、というので山の歌らしくおもえる。この巻に、「こもりどの沢泉《さはいづみ
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