ら月が部屋《へや》までさし込んで、嵐の吹いてくる今晩は、身に沁みてあなたが恋しゅうございます、というので、月の光と山の風とが特に恋人をおもう情を切実にすることを云っている。私はこの歌で、「窓ごしに月おし照りて」の句に心を牽《ひ》かれている。普通「窓越しに月照る」というと、窓外の庭あたりに月の照る趣のように解するが、「おし照る」が作用をあらわしたから、月光が窓から部屋までさし込んでくることとなり、まことに旨《うま》い云いかたである。月光を機縁とした恋の歌に、「吾背子がふり放《さ》け見つつ嘆くらむ清き月夜に雲な棚引き」(巻十一・二六六九)、「真袖もち床うち払ひ君待つと居りし間《あひだ》に月かたぶきぬ」(同・二六六七)等がある。
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彼方《をちかた》の赤土《はにふ》の小屋《をや》に霖《こさめ》降《ふ》り床《とこ》さへ沾《ぬ》れぬ身に副《そ》へ我妹《わぎも》 〔巻十一・二六八三〕 作者不詳
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これは寄[#レ]雨歌だから、こういう云い方をするようになったもので、「赤土の小屋」即ち、土のうえに建ててある粗末な家に小雨が降っ
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