う。本来馬で来れば到着が早いのであるが、それは理論で、まどろしく思う情の方は直接なのである。詩歌では情の直接性を先にするわけになるから、こういう表現となったものである。女にむかっていう語として、親しみがあっていい。

           ○

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大船《おほふね》の香取《かとり》の海《うみ》に碇《いかり》おろし如何《いか》なる人《ひと》か物《もの》念《おも》はざらむ 〔巻十一・二四三六〕 柿本人麿歌集
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 同上、人麿歌集出。「大船の香取の海に碇おろし」までは、「いかり」から「いかなる」に続けた序詞であるから、一首の内容は、「いかなる人か物念はざらむ」、即ち、おれはこんなに恋に苦しんで居るが、世の中のどんな人でも恋に苦しまないものはあるまい、というだけの歌である。序詞は意味よりも声調にあるので、何か重々しいような声調で心持を暗指するぐらいに解釈すればいい。「香取の海」は、近江にも下総にもあるが、「高島の香取の浦ゆ榜ぎでくる舟」(巻七・一一七二)とある近江湖中の香取の浦としていいだろう。なおこの巻(二七三八)に、「大船のたゆたふ海に碇《いかり》
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