特質をなしているものである。
この歌と一しょに、「巻向の檜原《ひはら》に立てる春霞おほにし思はばなづみ来めやも」(巻十・一八一三)というのがある。これは、上半を序詞とした恋愛の歌だが、やはり巻向の檜原を常に見ている人の趣向で、ただ口の先の技巧ではないようである。それが、「おほ」という、一方は霞がほんのりとかかっていること、一方はおろそかに思うということの両方に掛けたので、此歌も歌調がいかにも好く棄てがたいのであるから、此処《ここ》に置いて味《あじわ》うことにした。
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春霞《はるがすみ》ながるるなべに青柳《あをやぎ》の枝《えだ》くひもちて鶯《うぐひす》鳴《な》くも 〔巻十・一八二一〕 作者不詳
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春雑歌、作者不詳。春霞が棚引きわたるにつれて、鶯が青柳の枝をくわえながら鳴いているというので、春の霞と、萌《も》えそめる青柳と、鶯の声とであるが、鶯が青柳をくわえるように感じて、その儘こうあらわしたものであろうが、まことに好い感じで、細かい詮議《せんぎ》の立入る必要の無いほどな歌である。併し、少し詮議するなら、はやく
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