は或は人麿自身の作かも知れない。人麿の作とすれば少し楽に作っているようだが、極めて自然で、佶屈《きっくつ》でなく、人心を引入れるところがあるので、有名にもなり、後世の歌の本歌ともなった。併しこの歌は未だ実質的で写生の歌だが、万葉集で既にこの歌を模倣したらしい形跡の歌も見つかるのである。
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子等《こら》が名《な》に懸《か》けのよろしき朝妻《あさづま》の片山《かたやま》ぎしに霞《かすみ》たなびく 〔巻十・一八一八〕 柿本人麿歌集
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人麿歌集出。朝妻山は、大和南葛城郡葛城村大字朝妻にある山で、金剛山の手前の低い山である。「片山ぎし」は、その朝妻山の麓《ふもと》で、一方は平地に接しているところである。「子等が名に懸けのよろしき」までは序詞の形式だが、朝妻という山の名は、いかにも好い、なつかしい名の山だというので、この序詞は単に口調の上ばかりのものではないだろう。この歌も一気に詠んでいるようで、ゆらぎのあるのは或は人麿的だと謂《い》っていいだろう。気持のよい、人をして苦を聯想せしめない種類のもので、やはり万葉集の歌の一
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