この月」に白丸傍点]の過ぎ隠れまく惜しき宵《よひ》かも」(一〇六九)、「この月[#「この月」に白丸傍点]の此処に来《きた》れば今とかも妹が出で立ち待ちつつあらむ」(一〇七八)があり、巻三に、「世の中は空《むな》しきものとあらむとぞこの照る月[#「この照る月」に白丸傍点]は満ち闕《か》けしける」(四四二)がある。「おして照らせる」の表現も万葉調の佳いところで、「我が屋戸《やど》に月おし照れり[#「月おし照れり」に白丸傍点]ほととぎす心あらば今夜《こよひ》来鳴き響《とよ》もせ」(巻八・一四八〇)、「窓越しに月おし照りて[#「月おし照りて」に白丸傍点]あしひきの嵐《あらし》吹く夜は君をしぞ思ふ」(巻十一・二六七九)等の例がある。此歌で、「この月は」と、「妹が庭にも」との関係に疑う人があったため、古義のように、「妹が庭にも清《さや》けかるらし」の意だろうというように解釈する説も出でたが、これは作者の位置を考えなかった錯誤《さくご》である。
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海原《うなばら》の道《みち》遠《とほ》みかも月読《つくよみ》の明《あかり》すくなき夜《よ》はふけにつつ
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