む酒《き》ぞ、この豊御酒《とよみき》は」というのであり、「平らけく吾は遊ばむ[#「平らけく吾は遊ばむ」に白丸傍点]、手抱きて我はいまさむ[#「手抱きて我はいまさむ」に白丸傍点]」とは、慈愛|遍照《へんしょう》する現神《あきつかみ》のみ声である。

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士《をのこ》やも空《むな》しかるべき万代《よろづよ》に語《かた》りつぐべき名《な》は立《た》てずして 〔巻六・九七八〕 山上憶良
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 山上憶良の痾《やまい》に沈《しず》める時の歌一首で、巻五の、沈痾自哀文と思[#二]子等[#一]歌は、天平五年六月の作であるから、此短歌一首もその時作ったものであろう。また此歌の左注に、憶良が病んだ時、藤原朝臣八束《ふじわらのあそみやつか》(藤原|真楯《またて》)が、河辺朝臣|東人《あずまびと》を使として病を問わしめた、その時の作だとある。
 一首の意は、大丈夫たるものは、万代の後まで語り伝えられるような功名もせず、空しく此世を終るべきであろうか、というので、名も遂げずに此儘《このまま》死するのは残念だという意である。憶良は渡海して支那文
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