比等第三子)が常陸守になって任地に数年いたが、任果てて京に帰る時、(養老七年頃か)常陸娘子《ひたちのおとめ》が贈った歌である。娘子は遊行女婦《うかれめ》のたぐいであろう。「庭に立つ」は、庭に植えたという意。「麻手」は麻のことで、巻十四(三四五四)に、「庭に殖《た》つ麻布《あさて》小ぶすま」の例がある。類聚古集に拠《よ》って「手」は「乎」だとすると分かりよいことは分かりよい。「刈り干し」までは、「しきしぬぶ」の序のようだが、これは意味の通ずる序だから、序詞をも意味の中に取入れていい。地方にいる遊行女婦が、こうして官人を持成《もてな》し優遇し、別れるにのぞんでは纏綿《てんめん》たる情味を与えたものであろう。そして農家のおとめのような風にして詠んでいるが、軽い諧謔《かいぎゃく》もあって、女らしい親しみのある歌である。「東女《あづまをみな》」と自ら云うたのも棄てがたい。
 巻十四(三四五七)に、「うち日さす宮の吾背《わがせ》は大和女《やまとめ》の膝枕《ひざま》くごとに吾《あ》を忘らすな」というのがある。これは古代の東歌というよりも、京師から来た官人の帰還する時に詠んだ趣《おもむき》のものでこの
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