〕 安倍女郎
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安倍女郎《あべのいらつめ》(伝不詳)の作った二首中の一つである。女性の声の直接伝わり来るような特色ある歌として選んだが、そうして見ると、素直でなかなか佳いところがある。前に既に「君に寄りななこちたかりとも」(巻二・一一四)の歌を引いたが、この歌はもっと分かり易くなって来て居る。
なお、この歌の次に「吾背子は物な念《おも》ほし事しあらば火にも水にも吾無けなくに」(巻四・五〇六)という歌があって、やはり同一作者だが、女性の情熱を云っている。併しこれも女性の語気として受取る方がよく、此時代になると、感情も一般化して分かりよくなっている。寧ろ、「事しあらば小泊瀬山《をはつせやま》の石城《いはき》にも籠《こも》らば共にな思ひ吾が背《せ》」(巻十六・三八〇六)の方が、古い味いがあるように思える。巻十六の歌は後に選んで置いた。
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大原《おほはら》のこの市柴《いつしば》の何時《いつ》しかと吾《わ》が念《も》ふ妹《いも》に今夜《こよひ》逢《あ》へるかも 〔巻四・五一三〕 志貴皇子
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