た》えを聞くことが出来るといい得るのである。また、風の吹いて来るのは恋人の来る前兆だという一種の信仰のようなものがあったと説く説(古義)もあるがどういうものであるか私には能《よ》く分からない。ただそうすれば却って歌柄《うたがら》が小さくなってしまうようだから、此処は素直に文字どおりにただ天皇をお慕い申す恋歌として受取った方が好いようである。
この歌の次に、鏡王女《かがみのおおきみ》の作った、「風をだに恋ふるはともし風をだに来むとし待たば何か歎かむ」(巻四・四八九)という歌が載っている。王女は額田王の御姉に当る人で、はじめ天智天皇に寵せられ、のち藤原|鎌足《かまたり》の正室になった人だから、恐らく此時近江の京に住んでいたのであろう。そして、額田王の此歌を聞いて、額田王にやったものであろう。この歌にも広い意味の贈答歌の味いがあり、姉妹のあいだの情味がこもっている。併し万葉集には、妹に和《こた》えた歌とは云っていない。
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今更《いまさら》に何《なに》をか念《おも》はむうち靡《なび》きこころは君《きみ》に寄《よ》りにしものを 〔巻四・五〇五
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