》うごかし秋《あき》の風《かぜ》吹《ふ》く 〔巻四・四八八〕 額田王
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額田王《ぬかだのおおきみ》が近江天皇(天智天皇)をお慕いもうして詠まれたものである。王ははじめ大海人皇子《おおあまのみこ》(天武天皇)の許《もと》に行かれて十市皇女《とおちのひめみこ》を生み、のち天智天皇に寵《ちょう》せられたことは既に云ったが、これは近江に行ってから詠まれたものであろう。
一首の意は、あなたをお待申して、慕わしく居りますと、私の家の簾を動かして秋の風がおとずれてまいります、というのである。
この歌は、当りまえのことを淡々といっているようであるが、こまやかな情味の籠った不思議な歌である。額田王は才気もすぐれていたが情感の豊かな女性であっただろう。そこで知らず識らずこういう歌が出来るので、この歌の如きは王の歌の中にあっても才鋒《さいほう》が目立たずして特に優れたものの一つである。この歌でただ、「簾動かし秋の風吹く」とだけ云ってあるが、女性としての音声さえ聞こえ来るように感ぜられるのは、ただ私の気のせいばかりでなく、つまり、結句の「秋の風ふく」の中に、既に女性らしい愬《うっ
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