五)
夜《よる》光《ひか》る玉《たま》といふとも酒《さけ》飲《の》みて情《こころ》を遣《や》るに豈《あに》如《し》かめやも (同・三四六)
世《よ》の中《なか》の遊《あそ》びの道《みち》に冷《すず》しきは酔哭《ゑひなき》するにありぬべからし (同・三四七)
この代《よ》にし楽《たぬ》しくあらば来《こ》む世《よ》には虫《むし》に鳥《とり》にも吾《われ》はなりなむ (同・三四八)
生者《いけるもの》遂《つひ》にも死《し》ぬるものにあれば今世《このよ》なる間《ま》は楽《たぬ》しくをあらな (同・三四九)
黙然《もだ》居《を》りて賢《さか》しらするは酒《さけ》飲《の》みて酔泣《ゑひなき》するになほ如《し》かずけり (同・三五〇)
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残りの十二首は即ち右の如くである。一種の思想ともいうべき感懐を詠じているが、如何に旅人はその表現に自在な力量を持っているかが分かる。その内容は支那的であるが、相当に複雑なものを一首一首に応じて毫も苦渋なく、ずばりずばりと表わしている。その支那文学の影響については先覚の諸注釈書に譲るけれども、顧《かえりみ》れば此等の歌も、当時にあっては、今の
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