流行語でいえば最も尖端的なものであっただろうか。けれども今の自分等の考から行けば、稍遊離した態度と謂うべく、思想的抒情詩のむつかしいのはこれ等大家の作を見ても分かるのである。今、選抜の歌に限あるため、一首のみを取って全体を代表せしめることとした。

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武庫《むこ》の浦《うら》を榜《こ》ぎ回《た》む小舟《をぶね》粟島《あはしま》を背向《そがひ》に見《み》つつともしき小舟《をぶね》 〔巻三・三五八〕 山部赤人
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 山部赤人の歌六首中の一首である。「武庫の浦」は、武庫川の河口から西で、今の神戸あたり迄一帯をいった。「粟島」は巻九(一七一一)に、「粟の小島し見れど飽かぬかも」とある、「粟の小島」と同じ場処であろうが、現在何処に当るか不明である。淡路の北端あたりだろうという説がある。一首の意は、武庫の浦を榜ぎめぐり居る小舟よ。粟島を横斜に見つつ榜ぎ行く、羨しい小舟よ、というので、「小舟」を繰返していても、あらあらしくないすっきりした感じを与えている。あとの五首も大体そういう特色のものだから、此一首を以て代表せしめた。
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