明けむあしたは鳴きわたらむぞ[#「鳴きわたらむぞ」に白丸傍点]」(同・四〇六八)というのがあり、共に家持の作であるのは吾等の注意していい点である。

           ○

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験《しるし》なき物《もの》を思《おも》はずは一坏《ひとつき》の濁《にご》れる酒《さけ》を飲《の》むべくあるらし 〔巻三・三三八〕 大伴旅人
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 太宰帥大伴旅人の、「酒を讃《ほ》むる歌」というのが十三首あり、此がその最初のものである。「思はずは」は、「思はずして」ぐらいの意にとればよく、従来は、「思はむよりは寧ろ」と宣長流に解したが、つまりはそこに落着くにしても、「は」を詠歎の助詞として取扱うようになった(橋本博士)。
 一首の意は、甲斐ない事をくよくよ思うことをせずに、一坏の濁酒《にごりざけ》を飲むべきだ、というのである。つまらぬ事にくよくよせずに、一坏の濁醪《どぶろく》でも飲め、というのが今の言葉なら、旅人のこの一首はその頃の談話言葉と看做《みな》してよかろう。即ち、そういう対人間的、会話的親しみが出ているのでこの歌が活躍している。独り歌った如くであって相手を予
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