立てる地も田子浦の中たるなり」と説明して居る。)

           ○

[#ここから5字下げ]
あをによし寧楽《なら》の都《みやこ》は咲《さ》く花《はな》の薫《にほ》ふがごとく今《いま》盛《さかり》なり 〔巻三・三二八〕 小野老
[#ここで字下げ終わり]
 太宰少弐小野老朝臣《だざいのしょうにおぬのおゆのあそみ》の歌である。老《おゆ》は天平十年(続紀には九年)に太宰大弐《だざいのだいに》として卒《そっ》したが、作歌当時は大伴旅人が太宰帥《だざいのそち》であった頃その部下にいたのであろう。巻五の天平二年正月の梅花歌中に「小弐|小野大夫《おぬのまえつきみ》」の歌があるから、この歌はその後、偶々《たまたま》帰京したあたりの歌ででもあろうか。歌は、天平の寧楽《なら》の都の繁栄を讃美したもので、直線的に云い下して毫《ごう》も滞《とどこお》るところが無い。「春花のにほえ盛《さか》えて、秋の葉のにほひに照れる」(巻十九・四二一一)などと云って、美麗な人を形容したのがあるが、此歌は帝都の盛大を謳歌《おうか》したのであるから、もっと内容が複雑|宏大《こうだい》となるわけである。併し同時に概念化し
前へ 次へ
全531ページ中185ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
斎藤 茂吉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング