ならず、人麿の此歌を学んだものかも知れない。

           ○

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※[#「鼬」の「由」に代えて「吾」、第4水準2−94−68]鼠《むささび》は木《こ》ぬれ求《もと》むとあしひきの山《やま》の猟夫《さつを》にあひにけるかも 〔巻三・二六七〕 志貴皇子
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 志貴皇子《しきのみこ》の御歌である。皇子は天智天皇第四皇子、持統天皇(天智天皇第二皇女)の御弟、光仁天皇の御父という御関係になる。
 一首の意は、※[#「鼬」の「由」に代えて「吾」、第4水準2−94−68]鼠《むささび》が、林間の梢《こずえ》を飛渡っているうちに、猟師に見つかって獲《と》られてしまった、というのである。
 この歌には、何処かにしんみりとしたところがあるので、古来寓意説があり、徒《いたず》らに大望を懐《いだ》いて失脚したことなどを寓したというのであるが、この歌には、※[#「鼬」の「由」に代えて「吾」、第4水準2−94−68]鼠の事が歌ってあるのだから、第一に※[#「鼬」の「由」に代えて「吾」、第4水準2−94−68]鼠の事を詠み給うた歌として受納れて味うべきである。
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