遍路
斎藤茂吉

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)那智《なち》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)那智|権現《ごんげん》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#二の字点、1−2−22]
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 那智《なち》には勝浦《かつうら》から馬車に乗つて行つた。昇り口のところに著いたときに豪雨が降つて来たので、そこでしばらく休み、すつかり雨装束《あましやうぞく》に準備して滝の方へ上つて行つた。滝は華厳《けごん》よりも規模は小さいが、思つたよりも好かつた。石畳《いしだたみ》の道をのぼつて行くと僕は息切れがした。
 さてこれから船見《ふなみ》峠、大雲取《おほくもとり》を越えて小口《こぐち》の宿《しゆく》まで行かうとするのであるが、僕に行けるかどうかといふ懸念があるくらゐであつた。那智|権現《ごんげん》に参拝し、今度の行程について祈願をした。そこを出て来て、小さい寺の庫裡口《くりぐち》のやうなところに、『魚商人門内通行禁』と書いてあり、その側に、『
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