仏法僧鳥
斎藤茂吉

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)吉野《よしの》川を

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)紀伊の国|高野山《かうやさん》に

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#二の字点、1−2−22]
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 大正十四年八月四日の朝奈良の宿を立つて紀伊の国|高野山《かうやさん》に向つた。吉野《よしの》川を渡り、それから乗合自動車に乗つたころは、これまでの疲れが幾らか休まるやうな気持でもあつた。これまでの疲れといふのは、比叡山上《ひえいさんじやう》で連日『歌《うた》』の修行をし、心身へとへとになつたのをいふのである。
 乗合自動車を乗り棄《す》てると、O先生と私とは駕籠《かご》に乗り、T君とM君とは徒歩でのぼつた。さうして、途中で驟雨《しうう》が沛然《はいぜん》として降つて来たとき駕籠夫《かごかき》は慌てて駕籠に合羽《かつぱ》をかけたりした。駕籠夫は長い間の習練で、無理をするといふやうなことがないので、駕籠はいつも徒歩の人に追越
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