。こうなるともはや純客観というわけにはいかない。
 昭和二十二年の冬に疎開先を引きあげて東京に帰って来た。蚤が居るかとおもうと蚤がいない。これはDDT撒布のたまものであった。昭和二十三年になった。春の彼岸あたりは蚤が出るかとおもうと、蚤が出ない。夏至ごろになったら蚤が出るとおもうとやはり出ない。僕は汗をかきながら、蚤のいない夏床のうえに眠ることが出来た。



底本:「日本の名随筆18 夏」作品社
   1984(昭和59)年4月25日第1刷発行
   1999(平成11)年11月20日第20刷発行
底本の親本:「斎藤茂吉全集 第七巻」岩波書店
   1975(昭和50)年6月初版発行
入力:門田裕志
校正:氷魚、多羅尾伴内
2003年12月12日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
前へ 終わり
全6ページ中6ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
斎藤 茂吉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング