なが暫く休んで朝食をした。その間に赤彦君を看護《みまも》つてゐたが、平安な顔貌に幾らか苦しみの表情が出て来た。それを僕が凝視してゐると、幾ばくもなくその表情が取れて行つて、もとの平安な顔になつた。ときどき唸があつて、それが矢張り十ばかり続いた。九時に脈搏が触れなくなつたので、居合《ゐあは》せた人々が尽《ことごと》く枕頭に集つた。
 厳父、夫人の不二子さん、健次さん、周介さん、夏樹さん、初瀬さん、水脈《みを》さん、妹の田鶴《たづ》さん、弟の葦穂さん、その他の血族。長野から来られた守屋喜七さん。諏訪の田中一造、五味繁作、森山汀川、両角《もろずみ》喜重、丸山東一、藤森省吾、両角丑助、堀内皆作の諸君。東京から来た金原省吾、白水吉次郎、鹿児島寿蔵の諸君。京都から来た宇野喜代之介、竹尾忠吉の諸君。それに上に記した岡麓、岩波茂雄、橋本福松、藤沢古実、高木今衛、馬場謙一郎、今井邦子、築地藤子、阪田幸代等の諸君。僕が姓名を知らずにしまつて、また問合せるのに時の無い約十名。あはせて約四十名が枕頭に集つた。北海道の令弟塚原|瑞穂《みづほ》さん、それから小原節三、平福百穂、森田恒友、中村憲吉の諸君はいまだ途中
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