いはんに、始め後かけては四人か、其始め一人は思ひ人、一人は妻なりけんを、共に死て後に、又妻と思ひ人と有しなるべし、〔[#ここから割り注]始め二人の中に、一人は妻なり、後二人も一人は妻なりと見ゆ、然るを惣て妻と書しは後に誤れるならん、石見に別れしは、久しく恋し女に逢初たる比故に、深き悲みは有けん、むかひめはむつまじさことなれど、常の心ちには、かりそめの別を、甚しく悲しむべくもあらず[#ここで割り注終わり]〕何ぞといはば、此巻の挽歌に、妻の死時いためる歌二首並載たるに、初一首は忍び通ふほどに死たるを悲むなり、次の一首は児《コ》ある女の死を悲むめれば、こはむかひめなりけん、[#ここから割り注]これらは石見の任よりいと前なり[#ここで割り注終わり]かくて後に石見へまけて、任《マケ》の中に京へ上る時、妻に別るとて悲しめる歌は考にいふが如し、然れども考るにこは妻といふにはあらで、石見にて其頃通ひ初し女ならん、其歌に、さぬる夜はいくばくもあらではふつたの別し来ればとよみたればなり、又其別れの歌についでて、人麻呂[#(カ)]妻依羅[#(ノ)]娘子、与[#二]人麻呂[#一]別時[#(ノ)]歌とて、思ふな
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