女連が集まつて来て菜大根の類を洗つて居る。平凡な川口だと謂つていい。
併し、満月がのぼる時などは、一見平凡なこの川口も、月光の特別なかがやきを此処で見ることが出来る。これは反射面の多い川口の存在を明かに示してゐるのである。
この朧気川は山の断崖に沿うて流れたり、稲田のあひを流れたり、また支流を合したりして、尾花沢の朧気といふ部落を経て東へ向つて流れ、それからやうやく南へむかふ。そのあひだに、取上だの古殿《フルドン》などと部落がある。
それから川が細くなつて、峯岸といふ村の西を流れ、細野といふ村の北端から稍東に寄り、なほ南方の山中まで追尋することが出来る。細野村は山間の村で農を主業としてゐるが、炭焼も可なり居るので、大石田の人々がこの細野炭をも使つて居るのである。銀山の盛な頃にも細野、鶴の子の炭は有名で、炭焼竈は三百から四百を算へたさうである。
若しも自分の体力が快復して徒歩でここまで来ることが出来、この細野で朧気川に逢ふならば、必ず自分は心なつかしくおもふだらう。さうして、若しも村人の厚意によつて、一夜其処にやどることが出来るならば、翌朝早く立つて南方の山へこの川の源を辿るだら
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