「ナイスット。」
「カマクラノオバサントコヘオクル。」
「インニャ、タッタソイシコネ。」
「オバサントコハ三人ジャモン。」
「ウウ、ソイギイヨカネ。」

「これこそは真言である」といって鶴見は涙を流さんばかりにうれしがる。そして呪言《じゅごん》のようにこの問答を繰り返し口に誦《ず》している。こんな問答のうちにも、栂尾上人の夢の種がこぼれてひこばえているのかと、そう思ってみて、鶴見はいつまでもうっとりとしていた。

 その時から更に二旬は過ぎた。送って来た餅も尽きてしまった。危機のおびやかしが寒気とともに痩身《そうしん》に迫ってくる。
 庭の面《おも》には残雪が、日中というのに解けもせずにすさまじく光っているのがながめられる。
 鶴見は庵室に籠ったぎりで、心を想像世界に遊ばして、わずかに慰めている。永遠の夢がかれを支えているといって好い。徒《いたずら》に現実の餌食《えじき》となるのは堪えがたい。鶴見はこの上とも生きて生きてゆかねばならぬと覚悟しているのである。

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(註記。前に出した問答はわかりにくい。それは純粋の地方語で語られている。それを標準語に訳してみる。

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