られるところを見ると、友人はもはやこの家の立派な若主人である。そしてそれに相応した待遇を受けている。鶴見がこういうような生活ぶりを見たのは始めてである。しかしこの時は、学生の身分としての生活ぶりに懸隔の差が余りに多かったせいか、ただもの珍らしいと思ったばかりで、別段の感情は起さなかった。
須藤はそういう家庭に育っただけに、どことなく貴族的で、わざとらしくない品位が具《そなわ》っていた。ただその様子を見ていると、次第に迫ってくる暗い影が、かれの身に落ちかかっているようにも思われる。それが果して倦怠であろうか、絶望的な苦悩であろうか、そんなことが鶴見に分ろうはずもない。鶴見はこの友人が体がもっと強かったらばと思ったのみであった。
鶴見はそんな友人から透谷の『蓬莱曲』を借りて来たのである。かれのためには、ここに新しい友人を一人得たというよりも、新しい書によって、透谷その人に深く親しむことができたという方が適切である。
『蓬莱曲』はもちろんすぐに読みおわった。そして感激した。
『蓬莱曲』を読むと、『マンフレッド』が自然に思い浮べられる。バイロンも気随気儘な生活を送っていた。そしてあの図抜け
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