中に、人生における情熱と冷酷な現実との瞬間に縮められた永遠のたたかいを、ふいと見てとって深い深い息をつく。
 床《とこ》の間《ま》の壁に掛けた青木の画幀はその額縁を一つの窓として、そこからはユニクな海景が残りなく見わたされるようになっている。そう思っているうちに、鶴見には錯覚が起って来て、かれはいつの間にか、その窓からかれが往年の情熱的な争闘の生活を、食い入るばかりにしてながめていたのである。少年時にきざして、間歇的《かんけつてき》にかれを襲った性慾の経歴である。鶴見にもそういう時代がつづいたのであった。

 老刀自の傍にいることを鶴見は全く忘れていた。
「青木さんの絵は青木さんなりに特色があり過ぎるように思いますの。それで釣合がとれるかどうかわかりませんが、ちょっと何か活《い》けさせてもらいましょうか。」そういって、老刀自は片頬《かたほお》にさみしく笑う。
 鶴見はその声を聞いてびっくりした。急に覚醒した人がおぼえるように、胸には動悸が打って鳩尾《みぞおち》のところが冷《ひ》やりとする。これだけの心理の衝動を、身近にいる老刀自は感づいていないように見える。かれは妙だなと思う。しかしま
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