くなる。それが病みつきとなって、遂には切っても切れぬ仲となったのである。

 縁といい約束といえば、いつも絆《ほだ》されているように想像されるが、その中には自由はある。法悦さえ感ずることがある。そんな予感が文芸に絆された少年の心に媚《こ》びる。未知の境界《きょうがい》がこの少年を招き寄せる。迎えるものがあって迎えられるように思うのである。かれが気がついた時には、最早《もはや》深入りしていた。そして名利の方の欲は一切忘れてしまった。とはいえ、その事は生への執著を一切離れてしまったことにはならない。執著心はかえってますます増益する。文芸道にたずさわることは容易なものでない。そのわけが追々に分明になる。魔性の手が脅威の矛先《ほこさき》を向ける。それが絶間なくかれを苦しめる。その苦悩をも凌《しの》いで、なお法悦を見出そうとして、かれは一生を賭《か》けてしまった。漂泊の魂のためには、涯《はて》しも知らぬ曠野の旅である。それにもかかわらず、かれは少年時の甘い夢を見つづけている。しかもその夢の再現がまたかれを苦しめる。見返すたびごとにその影像が無慈悲と思われるまでに鮮明の度を増す。鶴見にはすべてが今
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