は秘訣がある。呼吸がある。それで傍《かたわら》から父の打つのを聞いていると、その心意気があたかも敵陣へ突き進む時の決意を示すように響いて来るのである。家族のものがそれを「まるで忠臣蔵の討入《うちいり》ですね」といって笑った。
 父の茶道はまずそんな風格のものであった。

 新築と共に国から一人の叔母が家事の監督がてらに上って来た。その叔母の顔には特徴があった。長面で頬がやつれていて眉間《みけん》の中央に目立って大きい黒子《ほくろ》がある。それが神々しく感ぜられる。唇にはいつも寂しい微笑を含ませ、眼差《まなざ》しにはいつも異様な閃《ひら》めきを見せている。いつ見てもそうときまっていて、その顔つきには表情の変化が現われて来ない。後から聞けば、その叔母はどうしたわけか結婚して間もなく、裏の溝川《みぞがわ》に身を投げた。気がふれたのだという。そういう話を聞けば顔だちの特徴にはなるほどと思われるふしがある。鶴見は今は未亡人であるこの叔母を尊敬もし、また親しんでもいた。特色の出ている人を好む彼の性向は早くこのころから萌《きざ》していたものと思われる。
 新築後は以前から長くいたおだいという乳母《う
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