のもろこ[#「もろこ」に傍点]は近所の川で今朝|漁《と》ってきたものであるというのである。鶴見にはそれが何よりの珍味であった。
老主人は草薙社への参道である一筋の夜みちを幼児の手を引くようにして、鶴見をみちびいて、親切にも案内された。人家もない畑の傍をたどって行くので足もとは暗い。その上に人が先を争って押合っていたからである。
社前に著《つ》くと、提灯《ちょうちん》や露店などの明りがさして薄ぼんやりと明るくはなっているが雑沓《ざっとう》はいよいよ激しい。見ればその真中を村の青年たちがおおぜいかかって、太い縄のようなものを担《かつ》いで、それに繋がって静に歩いてゆく、その傍に立って、一人列を離れて音頭《おんど》を取っている老爺《ろうや》がある。がんじょうそうな小柄な男である。肌脱ぎの中腰になって、体を左右にゆすぶりながら、右の手に持った扇《おうぎ》を煽《あお》るようにして揮《ふ》って、しきりに何やら喚《わめ》いている。多少だるそうにも見える青年の行列に対照して、これはまた異常な熱狂ぶりである。太い縄のようなものといったのは、流星に火を点ずる時の導線となるもので、その中に火薬が詰めてあ
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