神經的に變形させる。自然を解釋するといへば平俗に聞えるが、自然を變形させるといふことは、さう突飛なことでもないのである。その中から極めて魅惑的な風光が現はれて來る。藝術の尊重すべきところは、最初にもまた最後にも、自然の力の代りに藝術家の力の働いてゐるところ、その變形の祕術でなければならない筈だ。
 物質の剖析は科學的に、肉靈の合一は宗教的に、人生の改造は道義的に、そしてまた自然の變形は藝術的に、それぞれの方向を分つてゐる。その各※[#二の字点、1−2−22]は誇張された人間の思索及欲望である。然しながら藝術のそれが最も個性的であるのは、その一々に混同すべからざる深大な技法があるからだ。肉靈合一の一元的説相がいつしか空虚な夢に陷るのを引とめ、破壞すべき道徳をも認めぬところに、却て眞生命の流動を感知し、これを多樣異常なる技法によつて永遠の苑に移植する。藝術とは畢竟この事に外ならない。
 然るに何うであらう。現代の諸の方面の中で、純藝術の一面が頗る異端視されてゐる。その上に時機を得たジャアナリズムが頻りに文藝の大衆化を宣揚する。――だがわたくしは今あまりにも見さかひなく、徒らな感慨に耽りすぎ
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